茨木のり子さん、村山由佳さん、今村夏子さんの本を読みました。

9月の記録でも少し触れていましたが、茨木のり子さん熱が再燃しています。燃えたぎっているというよりは、沸々・グツグツという感じで。

茨木のり子さんが著名な先輩詩人の短めの伝記を書かれているのですが、それを人ごとに分けた本が図書館に置かれていたので、借りて読みました。

防衛費のために増税しようだとか、世論誘導のために防衛省が著名人にお金を配ったり、研究機関に予算をばらまこうとしていたりだとか、それを批判もせずただただ報道するメディアだとか。太平洋戦争前の空気感はこういう感じだったのではないかと感じています。

そのような中で当時は軍国少女としてそれらの思想に染まりに染まっていた茨木さんが「自分の感受性くらい自分で守ればかものよ」と自身を叱咤するような詩を後年に書かれたことの重みたるや…。

伝記として取り上げられた与謝野晶子さんや金子光晴さんも「反戦」の思いを持ち続けられた方達で、そのような方たちを選ばれた茨木さんの思いも感じます。

村山由佳さんの『風よ あらしよ』はNHK BSで吉高由里子さん主演でドラマ化されていたのをきっかけに読みました。かなり分厚いのですが、主人公でもある伊藤野枝の「なぜ?どうして?」という、常に焦れているような気持ちに急かされるように読了。

関東大震災後、パートナーである大杉栄と甥とともに密かに官憲に虐殺された伊藤野枝。たった28年間という人生のなかで、相当に波乱万丈な生き方をしてきた彼女。思想は粗削りであったり、まだまだ未熟な部分もあったと思いますが、それでも女性に人権などないに等しかった時代に、置かれた境遇に焦れ続け抗い続けたその生き様が伝わってくる一冊でいた。

あとは『星の子』を読んで以来少しずつ過去作を追いかけている今村夏子さんの『木になった亜沙』を。現実と空想の間というか、少し奇妙にずれた不穏さというか、いままでに読んできた作家さんの中では、村上春樹さんや小川洋子さんとどことなく通ずるものがあると勝手に思いながら読んでいます。

11月の読書メーター
読んだ本の数:4
読んだページ数:1095
ナイス数:12

君死にたもうことなかれ―与謝野晶子の真実の母性 (詩人の評伝シリーズ)君死にたもうことなかれ―与謝野晶子の真実の母性 (詩人の評伝シリーズ)
読了日:11月30日 著者:茨木 のり子
個人のたたかい―金子光晴の詩と真実 (詩人の評伝シリーズ)個人のたたかい―金子光晴の詩と真実 (詩人の評伝シリーズ)感想
詩人の金子光晴さんについて、茨木のり子さんがまとめた伝記のような一冊。反戦詩「寂しさの歌」の全文も収録されていた。
読了日:11月28日 著者:茨木 のり子
風よ あらしよ風よ あらしよ感想
NHKドラマをきっかけに拝読。最終章の源兄の部分はそのまま現代日本にも通じる嘆きだと思う。犬ではなく、まず個人でありたい。
読了日:11月26日 著者:村山 由佳
木になった亜沙木になった亜沙
読了日:11月01日 著者:今村 夏子

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