先月は他に仕事関係の本も読んでいたので、ちょっと少なめの3冊でした。

『きみはいい子』は、去年の8月に『世界の果てのこどもたち』を読み他作品も気になっていた中脇初枝さんの作品です。映画化もされていたのですね。

そちらは全く知らずでしたが、いわゆる「虐待」をテーマとしている作品です。
虐待を受けているのではないかと思われる児童の助けになれないかと自身の学級運営に問題を抱えつつも一歩踏み出そうとする教師、子どもの友達がおそらくは…という状況でささやかながらも見守る保護者、被虐待経験をもつ子どもが成長してからも続く苦しみや葛藤、それでも生き抜いてきたときの小さな光となってきた他者からの温かさ。

あくまでフィクションなので物語として消費してしまうことが戸惑われるテーマではありますが、子どもにとってどんな親でも親が一番であるとか、親の愛は子どもに自然と向けられる、といった幻想をやわらかく打ち砕いてくれる小説だと思います。

上の子も小学校の授業の一貫で、お父さん・お母さんありがとう系の作文を持ち帰ってくるようになりましたが、学校教育におけるそういった無邪気さは、子どもによっては鋭い刃になるだろうに…と、二分の一成人式に代表されるような、最近の小学校にはびこりつつあるカビのはえたような道徳観の古臭さが無性にしんどくなります…。

『女が死ぬ』は最近ちょいちょい図書館で予約しては読んでいる松田青子さんの作品です。長さはさまざまですが、フェミニズム視点に満ち満ちた短編集でした。

松田さんの長編作品はまだそこまで数も出ていないし、読んだことも少ないですが、短篇で現実と幻想のはざまの世界が設定されると、特にパンチが増す気がします。

「男性ならではの感性」とかは収められていたものの中では長いほうですが、ミラーリングとして秀逸でした。「ワイルドフラワーの一生」も面白かったです。

最後の一冊は、バッタ研究者の奮闘記ともいえる『バッタを倒しにアフリカへ』。

日本の世界における科学分野での凋落度合いは、論文引用数の低下といった面でも最近よくニュースに取り上げられていたりしますが、そりゃそうなるよねと思います。

博士課程に進んだ学生への補助は、特定の大学や特定の研究分野向けには一部増えたというニュースも見かけたことがありますが、博士号を取った後も険しい道すぎて。

この本を書いた前野さんも、アフリカでの研究中に研究継続や研究者としての先行きを猛烈に悩むことがあったと思います。(出版時には当時の苦境は脱していたので、そこまで重い筆致では書かれてはいませんでしたが)

でも本そのものは、生き物が、虫が、そして特にバッタが大好きなんだなという熱さと、さまざまな人達と明るく楽しく協力して研究を進めている姿もあり、読んでいて楽しったです。

あとがきで

夢を叶える最大の秘訣は、夢を語ることだったのかなと、今気づく

とあったのですが、歳を重ねてくると、本当それは真実だなとしみじみ思います。

2月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:920
ナイス数:8

きみはいい子 (一般書)きみはいい子 (一般書)
読了日:02月19日 著者:中脇 初枝
バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)バッタを倒しにアフリカへ (光文社新書)
読了日:02月17日 著者:前野ウルド浩太郎
女が死ぬ (中公文庫, ま51-2)女が死ぬ (中公文庫, ま51-2)
読了日:02月03日 著者:松田 青子

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