『逃げ恥』の原作を読んで、ドラマの脚本を担当された野木亜希子さんから、同じく野木さん脚本だったドラマ『空飛ぶ広報室』を思い出し、そうしたら観たくなって、ここ数日でHDDに残していたドラマを見返していました。

放送当時には開いたことがなかった公式サイトもまだ残っていました。(インタビューや撮影レポもいろいろ挙がっていて、ウキウキしながら目を通してます)
日曜劇場『空飛ぶ広報室』| TBSテレビ

原作である有川浩『空飛ぶ広報室』は未読なので知らなかったのですが、原作とはいろいろと設定が変わっていたりしたのですね。主役が空井ではなく稲葉になっていたり、同期の藤枝もオリキャラだったり、最終話はそもそもオリジナルエピソードだったり。

ドラマの企画意図は、

人生は思い通りになることばかりではありません。だけど、思い通りにならなかった時に、夢に破れた時に、やりたくない仕事をやらなければならない時に、どう動くかで人間の真価は決まる―― 「 なりたいものになれなくても、別のなにかになれる 」 ――。 企画意図|TBSテレビ:日曜劇場『空飛ぶ広報室』

とあったように、「仕事」への取り組み方というか、広くいえば「生きること」への姿勢がテーマだったのだと思いますが、個人的には、第4話「美女がオッサンになった理由」にあったように、男性が多い職場で働く女性の葛藤にスポットをあてたエピソードなんかも印象に残っています。

「女を武器にするのも、女を捨てるのも嫌です」という台詞や「男や女ではなく、人として」という関係性(とはいえ、物語では恋愛関係へも発展しているのですが)の肯定には、放送当時も勇気づけられました。

でもその一方で、放送当時はなんとも感じていなかったけれど、いまあらためて観るとイエローカード!と感じるような場面や危うい描写!という場面もちょこちょこありました。

たとえば、懇親会で上司が「いま付き合ってる人はいるの?」と部下たちに聞いたり、「じゃ、今日飲みに行きますか?」と飲みニケーションを積極的に使っていたり、時間外勤務的なものを「心意気」と表現していたり。(”セクシー鷺坂、ダンディー鷺坂”はよかった!)

ドラマでは信頼関係が培われている設定なので、プライベートな質問や飲みニケーションもありですが、そうでない場合はきわどいなと思ったり、「心意気」で済ますのは、いま現在、ブラック企業や教育や保育、介護の現場で問題になっている「やりがいの搾取」だよなと思ったり。

2013年4月期の放送でしたが、たった4年でも受け手側としての意識が変わるのを実感しました。

ほかには、「広報」という職業が題材になっているので、メディアのあり方、報道のあり方、といった話も出てくるエピソード(第9話「つのる想い・あふれる涙」)もあったのですが、極端な主張であってもどちらかに偏らせることなく相方の意見を取り上げる、いわば「両論併記」が正解に近いという論が出てきて、どうなんだろう?と思ったり。

同じエピソードでは、自衛隊について否定的な意見のみを流した情報番組へ空自の広報室が抗議を入れる場面もあったのですが、去年ころキャスターが入れ替わったいくつかの報道・情報番組(NHKとかTV朝日とか)を思い出したり。

また、第10話「君の隣で見えた景色」での空自の広報室室長である鷺坂が退官するエピソードでは、鷺坂がこれまでに提出した「宣誓書」が映し出されるシーンがあり、”政治的活動に関与せず”の部分も映っていたのですが、それで都議選前の現防衛大臣のとんでも発言を思い出したり。
服務の宣誓 – Wikipedia

なので、いま現在放送されていたとしたら、組織ではなく個人としての生き様を見せたいということは頭ではわかっていても、素直に物語を楽しむことはできなかっただろうなというところもありました。

でもドラマ全体を通して見返すと、やっぱり面白いし、テンポも良いし、そしてなにより登場人物全員の生き様が、清々しくそして爽やか!

大切にHDDに残しておこうと思います。あとは当時のCMもね、きっと貴重です。あ、堀北真希だとか、半沢直樹だとか、そんな予期せぬ再会もありました。

それではまた、chiroでした。

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