7月はわりと涼しい日も多くて、過ごしやすかったですね。

とは言え、私はうっかり夏風邪をひいてしまい、熱は出なかったものの、喉と鼻をやられて、月の後半は始終ズビズバゲホゴホしていました。

そんな7月中、新しく読んだのは以下の2冊です。

子どもたちが語る戦争の記憶

1冊目は、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著(三浦みどり訳)『ボタン穴から見た戦争――白ロシアの子供たちの証言』。1941年ナチス・ドイツの侵攻を受けた白ロシア(ベラルーシ)で、その当時、15歳以下の子どもであった人達の証言が集められた本です。

当時2歳や3歳だった人達の証言も含まれていましたが、まだ言葉として十分に記憶できない齢であったからこそ視覚的に記憶に焼き付いており、それを言葉にしているような。

身近で見させられた肉親や兄弟姉妹や知人の死、飢えや痛み、愛情への飢え。

著者の主観が押し出されることはなく、ただただ彼らの証言がまとめられ、並べられている本です。

ですが、それだけに、読み進めていくために感じる重量感が、半端なものではありませんでした。

娯楽(エンタメ)の顔をして浸透してくる思想

2冊目は、辻田真佐憲著『たのしいプロパガンダ』。

最近『帰ってきたヒトラー』という映画が公開されましたが、その感想やレビューを読んでいたときに知りました。

映画『帰ってきたヒトラー』公式サイト(公開されている間に、映画館で観たい…)

70年ぶりに蘇ったヒトラーに共感!? 劣化する日本に通じる「不気味な恐ろしさ」の正体(辻田真佐憲氏によるレビュー)

本では、政権の権力者達が「広告」の力を知り、研究し、利用し、いまも利用されているといった実態について、多くの具体例が挙げられていました。

権力者とはいえ、身らの主張をただただ言うだけでは、伝わりません。どうすれば、抵抗感や警戒心を持たれることなく、庶民に浸透させていくことができるのか?

それには、歌や映画、写真、本、ラジオやテレビといった娯楽の中に少しずつ混ぜ込んでゆくという手法が、断然有効なのです。

今江祥智著の『優しさごっこ』だったか、続編の『冬の光』だったか。

戦時中の子ども向けの雑誌を見返していた父親が、一緒に見ていた娘に「なにが印象に残った?」と聞いてみたら、「日の丸」との答えが返ってきて驚いたという場面がありました。

そうか、気にも留めていなかったけれど、こういう形で刷り込まれていたのか、との父親の感慨が印象に残っています。

プロパガンダなんて、日本には関係ないでしょ、と思うことなかれ。

現政権に批判的な主張をした人達はメディアから続々と姿を消していき、一方でヨイショヨイショの太鼓持ち発言をしている人達は同じ「政治的発言」であるにも関わらず順風満帆そうです。

都知事選の結果に新内閣の人事。こんな不安定な時代に生きることになるとは、思ってもみなかったことです。

2016年7月の読書メーター
読んだ本の数:2冊
読んだページ数:526ページ
ナイス数:6ナイス

ボタン穴から見た戦争―白ロシアの子供たちの証言ボタン穴から見た戦争―白ロシアの子供たちの証言感想
“思い出したくないような辛い思いをした人たちが語りたがらないのをいいことに、加害者の方は自ら名乗り出ることもなく、すべてが忘却されてしまう時を待っている。そして加害者もまた年とともに消えていきつつある”
読了日:7月13日 著者:スヴェトラーナアレクシエーヴィチ
たのしいプロパガンダ (イースト新書Q)たのしいプロパガンダ (イースト新書Q)
読了日:7月11日 著者:辻田真佐憲

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