ステイホームの夏、8月。読書がはかどりました。

新規本との出会いには、図書館と Kindle Unlimited を活用。11冊でした。

▼ Kindle Unlimited、2020年4月の契約以来、活躍してます!

まずは、「守り人」シリーズを書かれた上橋菜穂子さんが、大きな影響を受けた本としてエッセイなどで挙げられていた ローズマリ・サトクリフ氏のローマン・ブリテン4部作を読みました。

ローマン・ブリテン4部作と呼ばれているのは、『第九軍団のワシ』『銀の枝』『ともしびをかかげて』『辺境のオオカミ』の4作品。時代背景や登場人物にもつながりがあります。

ここ最近ニュースで耳にすることはあまりないですが、イギリスもアイルランドやスコットランドやウェールズなど、独立運動が根強く行われている国で、ものすごく遡れば、イギリスがローマに統治されていた時代に端を発している、のかな、たぶん。

イギリスの学校でも、ローマ統治時代のイギリスについての歴史はほんの少ししか触れられないと、あとがきでサトクリフさんも書かれていましたが、その時代に焦点をあてて書かれたのが、ローマン・ブリテン4部作。

出版年が一番新しい「辺境のオオカミ」も1980年、それ以外の3作品は1950年代に書かれたことを考えると、サトクリフさんが書かれたテーマは、時代を越えて通じるものだと感じました。

人種の違いや身分の壁、それぞれの正義。国への忠誠心、国の存在意義とは。そんなものに人は縛られるけれど、それらを飛び越える手がかりとなるのは、結局、個人対個人の向き合いなのだということ。

その辺りの感覚は、今回ローマン・ブリテン4部作を読むきっかけになった上橋菜穂子さんの「守り人」シリーズの中でも、「ヒュウゴ」という登場人物に色濃く反映されているのかなという気がします。

▼ ヒュウゴが主役をはる「守り人」シリーズの外伝『炎路を行く者』。個人的には、守り人シリーズの中で一推しの1冊。

あとは、先月から松田青子さんの作品を読み始めています。

『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』『自分で名付ける』『女が死ぬ』は人気で、まだまだ予約が回ってこないので、他の作品から読み進め中。

今回読んだ『おばちゃんたちのいるところ』は、落語や怪談の登場人物をベースにした作品で、登場人物の女性陣(人外のものが多いのですが)がとにかくパワフルで愉快で痛快で。

1つだけ、ああ本当にこんな人達がいてくれたら…と切なくなる章もあったのですが、読み終わると肩が軽くなるような作品でした。特に、女として生きることへの社会的息苦しさを感じているときに読むと、ニヤリと笑えるようになるんじゃないかなと。

他には、梯久美子さんの『狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ』も。先月は原民喜さんの評伝を読んで、今月は島尾ミホさんを中心とした評伝を読みました。

▼ 先月読んだ本の記録

島尾ミホの夫・島尾敏雄による『死の棘』は未読なんですが、これまで何回か耳や目にしたことはあり。(吉本ばなな → 吉本隆明 つながり?)

加えて、満島ひかりさん主演で島尾家を題材にした映画が公開されていたときに、梯さんによる寄稿などを見かけたことがあり、気になっていた評伝でした。

本から受けた島尾夫妻の生き方についての感想は読書メーターに書いた通りなんですが、25〜6歳の教養豊かな女性を「巫女」「少女」に押し込めた昭和の文壇は、なんというか、ザ・日本だなと。

島尾夫妻の長男で写真家である島尾伸三氏、お孫さんにあたられるイラストレーター・文筆家であるしまおまほ氏と、家族として続いている方達がいるということに、ほっとしてしまいました。あのハードな家庭で生まれ育って、よくご無事で…という感慨。

その他、印象に残った本として、中脇初枝さんの『世界の果てのこどもたち』は、何の気なしにKindle Unlimitedで読み始めたものだったのですが、これは、子ども達がもう少し大きくなったら読んで欲しいなと思った1冊でした。

いまの自公政権の中枢にいる日本会議系の人達にいつも思わされることですが、
先の太平洋戦争を賛美したり、教育勅語をほめたたえたり、靖国神社に参拝し続けたりすることが、この本を読んでも出来るのか? 前線で否応なく国の方針に巻き込まれた人達の歴史を知っても続けられるのか? と問うてみたいです。まあ責任を取らなかった人達の末裔なので、出来るというかするしかないというか、事実を直視できないのでしょうけれど。

加害者でもあり被害者でもあった歴史から目を背けても、歴史は決して消えはしないよということを力強く語りかけてくる本でした。

以上、8月の記録でした。

▼ Kindle Unlimited、今月は「白泉社」キャンペーンが行われており、懐かしい少女漫画の数々に悶絶してます。

8月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:3737
ナイス数:25

レモンタルトレモンタルト感想
この本を読んだ人はこちらの本も…で三浦しをんさんの『月魚』が出てきたけど、わかる気がする。
読了日:08月29日 著者:長野 まゆみ
世界の果てのこどもたち世界の果てのこどもたち感想
親目線で読んでも辛いし、子ども目線で読んでも辛い。でもまだ救いがある物語だった。 国レベルでも個人レベルでも、私達が覚えていなくてはならないこと、忘れてはいけないことが山程ある。
読了日:08月27日 著者:中脇 初枝
未来のだるまちゃんへ (文春文庫)未来のだるまちゃんへ (文春文庫)
読了日:08月26日 著者:かこ さとし
おばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Areおばちゃんたちのいるところ - Where the Wild Ladies Are感想
とても楽しい気分になる本だった。
読了日:08月22日 著者:松田 青子
二人のおうち 年を重ねてわかる、しあわせな住まいづくり二人のおうち 年を重ねてわかる、しあわせな住まいづくり
読了日:08月17日 著者:引田 かおり,引田 ターセン
おいち不思議がたり (PHP文芸文庫)おいち不思議がたり (PHP文芸文庫)
読了日:08月15日 著者:あさの あつこ
狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ狂うひと ──「死の棘」の妻・島尾ミホ感想
読んでいて申し訳ないけれど、途中から、島尾敏雄どうしようもない男性・父親だな…という思い一色になってしまった。戦争に翻弄されたことは確かだけれど、それは決して周囲の女性や家庭を巻き込み小説家としての己を見つけるための免罪符にはならないよなと。そして、出会った当時すでに25、6歳で、東京で教育を受け文学的素養もある女性をつかまえて「少女」と位置づけて評論した男性評論家達も、何だかな。お子さんも今なら児童相談所案件な家庭環境で、評伝としての面白さは◎なのだが、読んでいてしんどさもあった。
読了日:08月15日 著者:梯 久美子
辺境のオオカミ (岩波少年文庫)辺境のオオカミ (岩波少年文庫)感想
ローマ4部作、読み終わった。史実ではなく創作だが、イギリスの歴史も知らないことだらけだなと改めて。
読了日:08月11日 著者:ローズマリ サトクリフ
銀の枝 (岩波少年文庫)銀の枝 (岩波少年文庫)
読了日:08月09日 著者:ローズマリ サトクリフ
第九軍団のワシ (岩波少年文庫 579)第九軍団のワシ (岩波少年文庫 579)
読了日:08月08日 著者:ローズマリ サトクリフ
ともしびをかかげて〈下〉 (岩波少年文庫)ともしびをかかげて〈下〉 (岩波少年文庫)感想
学校の歴史ではほんの僅かしか扱われない時代を描いたサトクリフ。ローマ4部作と言われていることを知らずに3作品目から読んでしまったので、1作品目から読んでいきます。
読了日:08月07日 著者:ローズマリ サトクリフ

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