映像化された作品の原作(『侍女の物語』『誓願』と『護られなかった者たちへ』)を読みました。

アトウッド氏の『侍女の物語』と『誓願』は、Huluで「ハンドメイズ・テイル」という題名で現在シーズン4まで放送されてます。

Huluには未加入なので観たことはないですが、ドラマも話題作で、いろいろと受賞してますね。その影響で去年か一昨年あたりくらい、そこそこ最近にどなたかがどこかの媒体で『侍女の物語』がレビューされていたのを読んで、読書メーターの読みたいリストに入れていた本でした。

▼ Huluのシーズン1の予告映像

ドラマが放送されたのがわりと最近だったので(2018年?)、原作自体もそこそこ最近のものかと思っていたら、なんとびっくり! 『侍女の物語』は1985年出版でした。

ですが、描かれている風俗なんかにはもちろん多少の時代は感じるものの、物語の核となっている部分は2021年のいま読んでも十分わかってしまうものでした。

女性が産む道具としてのみ価値を与えられる、女性は経済的自由をうばわれる、文字や書物は支配階級だけのものにされる、女性の華美な服装は男性の劣情を誘うとして禁じられる、などなど。

大なり小なり未だに世界各地で現実に起きていることが、物語の舞台である「ギレデア共和国」の思想に織り込まれています。

そして『誓願』は『侍女の物語』のHuluでのドラマ化も受け、30年ぶりに書かれた続編とのこと。こちらは意外にも図書館での予約がほとんど入っておらず、すぐ読めました。

『誓願』では謎を残した終わり方だった『侍女の物語』のその後が描かれており、作品全体から立ち上ってくる雰囲気は『侍女の物語』とくらべると活動的なものになっていましたが、書かれていること・投げかけられていることはやはり重たいものでした。

もしも、自分だったら?
ジェンダー平等後進国の日本に生きている身の上としては、考えざるをえないものでした。

そして個人的な本を読む醍醐味はやはりそこで、いま現在はそのような境遇にないけれど、もし自分がその場におかれたら? どう振る舞う? どう考える? と、自分がこれまで経験していないことを疑似体験するというか、追体験するというか、知らない世界があることを知るというか、そこから考える種をもらうというか。

映画化された『護られなかった者たちへ』も、そんな種をくれるものでした。こちらはKindle Unlimitedの対象作になっており、軽い気持ちで読んで、ガツンとやられました。

こちらも映画は観ていないので、原作と異なる部分もあるかもしれないですが、「生活保護」が1つのテーマとなっています。

本文のラストで「護られなかった者たちへ」語りかけるようなメッセージがありましたが、個人的には、きつい境遇にいる人達に声をあげさせることを求めるだけでなく、政治として、社会として、それらを受けとめる体制を縮小すべきではないと思いますし、困っていると感じる人が声をあげやすくする、助けを求めやすくする、それを健康で文化的な最低限度の生活を受ける権利があるのだから心置きなく享受する、そんな方向へ社会全体の意識も変化して欲しいです。

Amazon Kindle Unlimited

10月の読書メーター
読んだ本の数:3
読んだページ数:1557
ナイス数:49

護られなかった者たちへ護られなかった者たちへ感想
護られなかった人たちが声を上げることを求めるだけでなく、まさに今のどこかの与党が言うように小さい声を聴くことが今の政治に求められていることだろうし、その声を大きくしていくことが私たちに出来ることでもあるだろう。
読了日:10月23日 著者:中山 七里
誓願誓願感想
あとがきにあったが「自分はこれまでの歴史上や現実社会に存在しなかったものは一つも書いたことがない」とのアトウッド氏の言葉が重い。 そしてリディア小母の振る舞いには考えさせられてしまう。彼女のとった行動が、復讐の念によるものや正義感という類のものによる行動であったとしても、そのための駒のように扱われ命を落としていった人達のことを考えるとなおさらに。
読了日:10月10日 著者:マーガレット・アトウッド
侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)感想
1986年発表の物語だったのか。もう少し最近の作品だと思いながら読んでいた。それほどまでに、女性としてリアリティを感じざるを得なかった。2021年でもあぁ既視感のある主張だ…と思わされてしまうギレアデ共和国を支える「考え」の数々。
読了日:10月07日 著者:マーガレット アトウッド,Margaret Atwood

読書メーター