2022年10月中に読んだ本
10月はKindle Unlimitedの対象作品を3冊と、図書館本で2冊読みました。
一番印象に残っているのが、今村翔吾さんの『じんかん』です。
主君殺しや東大寺焼き討ちなど、悪人として名高い松永久秀を主人公にすえ、彼の行動原理の背後にあったものは「民主主義」であるとの仮定のもと、これまでと全く異なる松永久秀像が描かれている小説でした。
Kindleでのレビュー点が高かったので、松永久秀が主役?一体どんな話なんだろう?と借りてみたら、大当たりでした。
世界を一気に変えることは難しくとも、次世代に少しでもよい世界をという思いのもと人は続いてきているし、その元にあるのは名を残した人ばかりでなく、名もなき人々でもあるし、はたまた名もなき人たちの集団としての振る舞いの不可思議さへの苛立ちや絶望や希望であったり。そのような部分もものすごく現代の日本に通じるところがあるように感じて響きました。
いまやっている大河ドラマ『鎌倉殿の13人』も、勝手ながら、力や恐怖で人をまとめていく時代から、法の下での支配へとまとめ方が変化していく様を描こうとしている部分もあるのかなと思っていたり。
その時代その時代で人間の行動原理は多少なりとも異なるでしょうが、それでも、くり返される歴史というか、結局のところ、形をかえつつも同じようなことに挑戦し、ほころびが生じて一回すたれ、また日の目を浴びるといったサイクルを感じられてしまうのが、時代小説の1つの醍醐味かなと。
あとは、やはり不思議なサスペンス感をもつ
- 今村夏子さんの『むらさきのスカートの女』
先月読んだ佐藤さくらさんの「魔導シリーズ」と同じく、創元ファンタジイ新人賞を受賞した
- 庵野ゆきさんの『水使いの森』
これも魅力的な登場人物が多すぎて、読書メータの感想にも書いたように、ふくらませたら上橋菜穂子先生の守り人シリーズくらいの長さにもなりそうな物語でした。
あとは、自閉症児に見られる方言をあまり使用しないという現象についてと、その理由について考察されている
- 松本敏治さんの『自閉症は津軽弁を話さない』
「ピタゴラスイッチ」装置の製作者として有名な
- 佐藤雅彦さんの『ベンチの足』
を読みました。佐藤雅彦さんのエッセイは、簡潔なのですがオシャレ感があるというか、向田邦子さんのエッセイに通じるようななにかを勝手ながら感じました。
10月の読書メーター
読んだ本の数:5
読んだページ数:1625
ナイス数:23
じんかんの感想
新しい松永久秀像を描いてみせたというだけでなく、民主主義とはなにか、人の集団としての不思議さ、名前が残らない大多数がどう振る舞うか、なにがよい未来につながるか、といった問いかけも含まれている、現代にもつながる作品だった。
読了日:10月27日 著者:今村 翔吾
むらさきのスカートの女
読了日:10月25日 著者:今村夏子
水使いの森 (創元推理文庫)の感想
膨らませたらそれこそ上橋菜穂子さんの守り人シリーズくらいの厚みになりそうな物語の濃厚さだった。魅力ある登場人物が何人も!
そして、次世代に知をつなぐこと、新しい風を自らが起こす役割を果たすこと、(ある面では)強き者だからこそできることがあるというメッセージもよかった。
読了日:10月20日 著者:庵野 ゆき
自閉症は津軽弁を話さない 自閉スペクトラム症のことばの謎を読み解く (角川ソフィア文庫)
読了日:10月16日 著者:松本 敏治
ベンチの足 (考えの整頓)
読了日:10月07日 著者:佐藤 雅彦
読書メーター