先月読んだ投資に関係する本、そして有名ブロガーちきりんさんの本も面白かったのですが、

パトリック・モディアノ著『1941年。パリの尋ね人』という本に、想像していた以上にずしりとやられたので、書きとめておきたいと思います。

パトリック・モディアノ著『1941年。パリの尋ね人』

どのような文脈であったか忘れてしまったのですが、新聞で取り上げられていたのをメモしており(ノーベル文学賞受賞のとき?)、図書館で借りてきました。

邦訳の出版は1998年。もう10年以上前です。

「尋ね人。名前ドラ・ブリュデール、女子、十五歳、目の色マロングレー、うりざね顔…」。1941年12月31日、占領下のパリの新聞に載った「尋ね人広告」。これを偶然発見した時から、作家モディアノの10年にわたる少女ドラの行方を探す旅がはじまった…。歴史の忘却に抗し、名もなきユダヤ人少女のかすかな足跡を追い求め、フランスを感動の渦に巻き込んだ名作。

「BOOK」データベースより

読み始めから、そこには、観光地として親しまれているキラキラとした明るいパリではなく、重く暗く寒々しいパリの姿がありました。

少女ドラについてモディアノが調べて得られた事実と、同時期にパリで過ごしていたモディアノ自身の父の姿が影のように重ねられながら話が進んでいきます。

読んでいてどうしても胸に迫ってきてしまうのは、ただの市民、一人の少女、もしモディアノがこの作品を書かなければ、誰の記憶にも存在していなかったかもしれない、そんな普通の人に焦点が当てられているからかもしれません。

フランスで生まれ、フランスで育ってきたにも関わらず、ルーツがユダヤ系であるというだけで、ある日突然自由が奪われ、さらには生存が許されなくなるとしたら?

ピクニックに行くよと言われ、喜んでトラックに乗せられた自分の子ども達に、もう2度と会えないとしたら?

おそらく2度と帰れないと感じながらも、収容所への移送前の僅かな時間に、検閲の目を逃れながら、家族に宛てて、心配いらないよと繰り返し書かれた手紙。

この作品では、少女ドラだけでなく、そういった哀しい運命に置かれた名もない人々の姿が書きとめられています。

そしてそれと同時に、哀しい運命に追いやった側についても想像させられます。

現代のように、過去を振り返ることができる状況においては、ホロコーストについて、なんて非道な…残酷な…と思うこと、そして責めることはたやすいです。

しかし、もし自分がそういった時代・状況の当事者であったら?

節を曲げずにいることができるだろうか?

見て見ぬふりをせずにいられるだろうか?

加担する側に回ってしまわないと言い切れるだろうか?

そんな自問自答もしてしまいます。

訳者の白井成雄さんのあとがきも、ずしりとくる内容でした。

もし機会があれば、ぜひ多くの方に手にとって、読んでみていただきたいと思った本です。

読みながら連想された作品

ナチス・ドイツ時代に関連する映像作品です。

その1。映画『愛をよむひと

その2。『白バラの祈り

「もはや名前もわからなくなった人々を死者の世界に探しに行くこと、文学とはこれにつきるものかもしれない。」

『1941年。パリの尋ね人』への批評文より

読書メーターでのまとめ

2015年2月の読書メーター

読んだ本の数:5冊

読んだページ数:1093ページ

ナイス数:1ナイス

1941年。パリの尋ね人1941年。パリの尋ね人

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