東京都八王子市にある武蔵野幼稚園の園長先生が書かれた本です。新聞広告で見かけた祖母が、子育ての参考になるかもしれないからと送ってくれました。

育児や子育て、幼児教育に関する本は、方針が合わなかったり、読んでいて疑問が生じてきたり、見過ごせない引っかかりを感じてムムム…と険しい顔になるものもある(あった)ので、期待半分で読み始めたのですが、この本は期待以上でした

▼ ムムム…となったときの話はこちら

日本一めんどくさい幼稚園の教育方針

日本一めんどくさい幼稚園、こと武蔵野幼稚園は、「目に見えない根っこを太らせる教育」を運営方針にしているそうです。

「根っこ」とは、

  • 困難だと思っても挑戦できる
  • 努力し続けられる
  • 最後までやり抜ける

といったことを指しており、

「教育に力を入れている幼稚園」と聞くと、なんとなく、「お勉強主体な詰め込み型の園」をイメージしてしまいますがそうではなく、

勉強することは大切です。でも、それは幸せになるための「必要条件」であって、「必要十分条件」ではありません。 勉強に加えて、困難だとわかっていても挑戦できる人、努力し続けられる人、失敗しても最後までやり抜くことができる人に育てなければなりません。 『日本一めんどくさい幼稚園』より

と頭の方に書かれており、導入からかなり共感できました

いま私には3歳の息子がいます。いろいろな体験をさせてあげたいと思い、保育園でできる英語や体操などの習い事をさせていますし、家でも絵本を読んであげたり、文字や数字を教えたりもしています。

ですが、彼(や、いまはまだ生後1ヶ月の娘もいます)が成長して、いざ自分で色々取り組まなくてはならないとなったとき、そのとき必要な力とは、もちろん知識や経験も必要ですが、こういった上の3つの力だろうなと、かねてから思っていました。

じゃあそれを育むためには、どういうことに気をつけて、子どもと日々向き合っていけばよいのか

親として知りたくなるのはその点ですが、それについての園長先生の考え方が丁寧に書かれている本でした。

エッセンスとしては、

  • 自分で感情や理屈を言葉で説明させる
  • 自分で決めさせる
  • 自分で決めたことは責任をもって遂行させる
  • 自分の「得意」も「不得意」も肯定する
  • 自分の気持ちと他人の気持ちをすり合わせて行動する

など、「主体性」や「自己肯定感」、そして「他者の尊重」がキーワードと言ってよいかと思います。

主体性を育むには

たとえば、主体性に関しては次のような文がありました。

「子どもは大人の言ううことを聞いていさえすればいい」という態度こそが、実は甘やかしなのです。 『日本一めんどくさい幼稚園』より

そうした向き合い方は、「子どもが自分で考える機会を奪っている」というのは、本当にその通りだなと。

イヤイヤ期の対応には、私も手を焼きましたが、「イヤイヤ」もまずは自分に感情があることを知る大事なステップ。そして、「こうしたらイヤじゃなくなる?」と手助けしてあげる時期を経て、じゃあ「あなたはどうしたいのか?」と、子どもの気持ちや意見を言葉で表現させていくステップに進んでいく。

“「あなたはどうしたいの?」なんて今まで聞かれたことなかった。私って、人間扱いされてなかったんだなって気づいちゃった”との台詞がある題名不明の漫画がいま脳裏にあるのですが、自分の気持ちや意見を言葉で表現する機会を持つって、大事なのですね。
(追記6/16:思い出しました!成田美名子『NATURAL』に出てくるアリーシャという女の子の台詞でした。すっきり。)

そして、さらなるステップとして、子どもが「やりたい」とか「やる」と言葉で表現したことについては、責任をもってやり遂げさせることも大事と。

4歳、5歳、6歳と成長していく過程で、念頭に置いておきたいと思いました。

自己肯定感を育むには

「自己肯定感」は、最近よく聞くようになったワードですが、

自己肯定感とは、自分のあり方を積極的に評価できる感情、自らの価値や存在意義を肯定できる感情などを意味する言葉です。 (出典 実用日本語表現辞典) 自己肯定感とは|国立青少年教育振興機構より

とあるように、ざっくり言うと「自分が価値ある存在であると思える感覚のこと」です。(太宰治の”生まれてきて、すみません”の対極?)

すぐには出来ないけれど、少し頑張ればできるような目標設定をして、取り組ませてみるのが1つの方法のようです。目標設定には、母子手帳にある年齢ごとの「〜はできますか?」「〜をしますか?」の項目を参考にするのも手だとのこと。

武蔵野幼稚園では、最終学年の園児たちが運動会で4段の縦の跳び箱を飛ぶことがメインイベントになっているとのことですが、「4段の縦」は、すぐには出来ないけれど、少し頑張れば出来るようになるくらいの絶妙な設定だそう。

なので、その練習を通して、「自分は他の子のようにできない」や「自分もやればできた」など、自分を客観視しながら「それも自分だと受け入れる」という、自己肯定感の土壌づくりをしているようです。

他者を尊重できるようになるには

武蔵野幼稚園では、年長さんになると、班のリーダー決めを話し合いで決めさせるそうです。実際に、子どもたちがどのような話し合いをして、班長を決めたのかという記録も載っていましたが、興味深かったです。

自分の気持ちや意見を言葉にする訓練を積んで、自己肯定感も育まれているからこそ、自分が他人と違う意見を持っていても、自分の存在が否定されたとは感じない。

自分の意見と他人の意見がすり合うポイントを探していく。

年長さんでも、こんなに立派な話し合いができるのかと、びっくりでした。

自己肯定感が育まれていたり、他人は自分とは違う一人の人間だと感じられているからこそ、きちんと尊重できるのですね。

まとめ

主体性、自己肯定感、他者の尊重と、この記事ではキーワードごと私が勝手にまとめましたが、本全体としては、これらのキーワードがはっきり章立てされているわけではなく、複合的に、いろいろと絡み合いながら書かれています。

そして、本のタイトルの「めんどくさい」というのは、こうした幼稚園の方針にそって教育するには、「子どもとこまめに向き合ったり、場合によっては、大人が責任を引き受けて見守ったりする覚悟を持たなくてはいけない」ことからきているそうです。

全部で221ページの本ですが、読みがいがありました。

そして、本を書かれたのは”幼稚園”の園長先生で、幼稚園での子育ての主体は「母親」に偏りがちなことから(?)、文中での呼びかけがところどころ「お母さん」や「母親」となっている部分もありましたが、大半は「親」になっていた点も、個人的には好感を抱いた1冊でした。

家での教育方針を固めていくにあたって、オットにも試しに読んでもらいたいなと思っています。

それではまた、chiroでした。